革靴がひび割れてしまったら「もう捨ててしまうしかない…」と思うかもしれません。
しかし、まったくそんなことはありません。
簡単な道具を使って補修すれば、ひび割れがあったことが分からないくらいに綺麗になり、まだまだ長く愛用できます。
この記事では、ひび割れをプロ並みに綺麗に補修する方法をご紹介します!
また、革靴にひび割れができる原因や効果的なひび割れ対策も載せているので、お持ちの革靴と長く付き合っていきたい方はぜひ最後まで目を通してみてください。
ひび割れ補修のおおまかな流れ
まず、ひび割れ補修のおおまかな流れを説明します。
おおまかな流れを知っておくと、補修のイメージがつきやすくなると思います。
下の写真では、黄色の楕円で囲った箇所がひび割れてを起こしてしまっています。
このひび割れを単純化してイラストにすると以下のようになります。
ギザギザした部分がひび割れが起きている部分です。
ひび割れの補修では、まずひび割れている箇所を**サンドペーパー**で削ってなめらかにします。
サンドペーパーで削ると、その部分の色が落ちてしまうので、つぎに**アドカラー**という補色クリームを塗って色付けをします。
これが、ひび割れ補修のおおまかな流れです。
ひび割れ補修の注意点
ひび割れの補修をおこなう際には、2 点注意点があります。
1. 革の風合いが変わってしまう
まずは、革の風合いが変わってしまうということです。
前章で説明したように、ひび割れを直すには革の表面を削らなければいけませんが、この過程で革本来の風合いが失われてしまいます。
参考までに、補修のビフォーアフターは下のようになります。
微妙に質感が異なるのが分かるでしょうか?
傷を直す前は革の自然な風合いがありますが、直した後は自然な風合いがなくなっています。
2. 直せるひび割れと、直せないひび割れがある
もう一点は、ひび割れの深さによっては自宅での補修が難しいことがあるということです。
下の写真は、自宅で補修できる「浅いひび割れ」の写真です。
黄色の楕円で囲った部分に、亀裂があります。
これぐらいの浅いひび割れであれば、削って平坦にすれば綺麗になります。
一方、下の写真は、補修が難しい「深いひび割れ」の写真です。
赤の楕円で囲った部分に、深い亀裂があるのが分かります。
これはサンドペーパーで削ってもなかなか表面がなめらかになりません。
下手をすると、削りすぎて穴を開けてしまうかもしれません。
もし深いひび割れが起きてしまったら、買い換えどきだと思います。
どうしても補修したい場合は、「チャールズパッチ」という修理の方法があります。
ブラックジャックの顔のようなイメージで、革のパッチを当てる方法です。
ただ、この方法は自宅での補修が難しいので、プロに相談してみましょう。
ひび割れ補修に用意するもの
さて、実際に補修をおこなう際には、サンドペーパーやアドカラーの他にもいくつか用意するものがあります。
「必要な道具が多い!」と思うかもしれませんが、補修することも革靴を楽しむ醍醐味の一つ。
補修したあとは愛着がより一層増しているはずなので、道具を揃えてしっかり綺麗にしてあげましょう。
サンドペーパー
まず、サンドペーパーを目が粗いのと細かいのを 1 枚ずつ、合計 2 枚用意します。
目が粗いほうでひび割れた部分を削っていき、目の細かいほうでなめらかに仕上げるイメージです。
目が粗いほうは 240 番、目が細かいほうは 400 番あたりがおすすめです。
クリーナー
色付けをおこなう前に、革の表面についた古いクリームやサンドペーパーの削りカスなどの汚れを拭き取るためにクリーナーを用意します。
革を痛めることなく汚れを落とすことができる、モゥブレィのステインリムーバーがおすすめです。
布
ステインリムーバーで汚れを拭き取るときに使う布を用意します。
もし自宅に使い古した T シャツなどがあれば、そちらを使った方が経済的です。
アドカラー
アドカラーは、革靴の手入れ用品メーカー・コロンブスから販売されている色をつけるための補修クリームです。
靴の色に合った色のアドカラーを一本用意します。
ちなみに、絵の具のように複数の色を混ぜて使うこともできます。
靴の色にちょうど合う色がないときは、靴に近い色のアドカラーをいくつかを混ぜて靴にぴったりの色を作ってみましょう。
色選び & 色作りのコツ
靴にぴったりの色を作るのは、なかなか難しいです。
混ぜながら、すこしだけ明るくしてみたり暗くしてみたりといった微調整を繰り返すことになります。
この微調整に使えるのが「黄色」と「青」のアドカラーです。
色を明るくしたいときは「黄色」、色を暗くしたいときは「青」を混ぜると、ちょうどいい具合に色の明暗を調整できます。
アドカラーを購入する際は、靴の色に近そうなクリームを 2 〜 3 本、「黄色」と「青」を 1 本ずつ買っておくと靴の色に合った色のクリームが作りやすいです。
アドカラーを混ぜて色を作る手順は後ほど説明します。
筆
アドカラーを混ぜたり塗ったりするための筆を用意します。
混ぜたり塗ったりするので、少し細めの平筆が使いやすいと思います。
パレットになるもの
アドカラーを混ぜて色を作るためのパレットを用意します。
乳化性クリームや小瓶の蓋などでも代用ができます。
アドカラーを水で溶かすための小さな容器
アドカラーは、絵の具と同じ要領で水に溶かしながら使っていきます。
このときに使う小さな容器を用意します。
この記事では、100 均に売られている小瓶を使っています。
汚れてもいい小さな容器がない場合は、100 均で探してみてください。
ひび割れ補修の手順
それでは、実際にひび割れ補修の手順を説明します。
今回は、先ほどから写真で登場しているこのひび割れを補修してみます。
これを、ひび割れが分からないくらい綺麗にしていきたいと思います。
ちなみに、サンドペーパーを使う際に削りカスが出るので、新聞紙などを下に敷いて作業することをおすすめします。
補修にかかる時間は、約 30 分です。
1. サンドペーパーで表面をやすりがけ
まずは、ひび割れている部分を 240 番のサンドペーパーでやすります。
ひび割れの亀裂がなくなって平坦になるまでやすりましょう。
靴の内側から押して、シワを伸ばすようにしながらやするのがコツです。
下の写真は、ひび割れがなくなって平坦になるまでやすりがけしたあとの写真です。
次に、目の細かい仕上げ用の 400 番のサンドペーパーを使って表面を整えていきます。
下の写真は、表面を整えたあとの写真です。
表面がサラサラになるまでやすりがけします。
なるべくピンポイントでやすりがけすること
やすりで削ってしまうと、革が持っている風合いが損なわれてしまいます。
ひび割れを補修するために削ることは仕方がありませんが、なるべく革の風合いを損なわないためにも、ひび割れしている箇所をピンポイントでやすりがけするようにします。
2. クリーナーで汚れを拭き取る
やすりがけができたら、次はクリーナーでやすったあとのカスや汚れなどのゴミを拭き取ります。
しっかり拭き取れていないと、次に使用するアドカラーが剥がれやすくなってしまいます。
アドカラーの定着をよくするためにも、ここでしっかりとゴミを取っておきます。
まず、布にクリーナーを 10 円玉くらいの大きさに染み込ませます。
布に取ったクリーナーで、ゴミを拭き取ります。
クリーナーが染み込んで色が濃くなりますが、一時的なものなので問題ありません。
3. 靴の色に合ったアドカラーを作る
次は、靴の色に合ったアドカラーを作ります。
色が違うとアドカラーを塗ったところだけ目立ってしまいます。
このアドカラー作りが、ひび割れの補修で一番大切なパートだと言えるでしょう。
まず、パレット代わりの瓶の蓋に、靴の色に近いアドカラーをとります。
今回は赤茶色の靴を補修するので、茶色と赤のアドカラーを混ぜてみます。
これだけだと色が明るいので、青をすこし混ぜて色を濃くします。
靴に合った色を作れたら、筆にとって瓶のなかに入れます。
瓶に入れたアドカラーを、少量の水で溶かします。
いきなり水をドバッと入れるとクリームがダマになってしまうので、少しづつ水を入れるのがコツです。
これで靴の色に合ったクリームができました。
すこしだけ明るくすると、靴の色に合いやすいです。
本格的に塗り始める前に色味を確かめておきましょう
靴の色に合ったアドカラーができたと思ったら、本格的に塗る前に、目立たない箇所に軽く塗って靴の色とちゃんとなじむか確認してみましょう。
水で溶かしたアドカラーを筆に染み込ませ、ティッシュで余分な水分を取ります。
そして、目立ちにくい土踏まずの部分や、タン(足の甲に当たる部分)に塗ってみます。
塗ってみて違和感がなければ、靴の色に合っていると思います。
日陰と直射日光下では色の見え方が異なるため、室内と屋外と両方で色味の確認ができればベストです。
4. 水に溶かしたアドカラーを塗る
靴の色に合ったアドカラーを作れたら、やすりがけした箇所に塗っていきます。
まず、水に溶かしたアドカラーを筆に染み込ませたら、一度ティッシュに当て、余計な水気を取ります。
やすりがけした部分に塗ります。
水で薄めているため、一度塗っただけでは色味は合いません。自然な色味になるまで、何度か重ね塗りしましょう。
下の写真は、色味が合うまでアドカラーを重ね塗りしたあとの写真です。
5. 乾かす
色付けが終わったら、あとはしっかり乾燥させましょう。
風通しのいい日陰で、10 分ほど置いておけば完全に乾きます。
これで、ひび割れの補修は完了です!
ビフォーアフター
下の写真は、ひび割れの補修前と後の比較写真です。
ひび割れが合ったことが分からないくらい、綺麗になっています!
ただ、アドカラーを塗った跡がちょっとだけ明るく見えてしまっています。
なかなか色味を合わせるのは難しいですね…!
革靴にひび割れができる原因
ひび割れ補修が完了したら、次からはひび割れが起きないように対策しておきましょう。
まず、革靴にひび割れが起きるのにはいくつか原因があります。
私が実際に体験したり調べたりした限りでは、主に 3 つの原因によってひび割れは起こります。
原因その 1. 手入れ不足による革の乾燥
1 つ目は、「手入れ不足による革の乾燥」です。
革はもともと動物の皮からできており、水分と油分を含んでいます。
革が柔らかくて丈夫なのは、この水分と油分のおかげです。
しかし、水分と油分は、手入れしないとどんどんと抜け落ちて乾燥してきます。
乾燥しすぎると革はもろくなってしまい、歩いたときの足の屈曲に耐えきれずにひび割れを起こしてしまいます。
原因その 2. シワが深くなることによる革の劣化
2 つ目は、「シワが深くなることによる革の劣化」です。
靴は、足の動きに合わせてグニャリと曲がってシワができます。このシワは、一度クセがつくと位置は変わりません。
歩くたびに同じところが屈曲し続けると、だんだんと革の繊維がプチプチと切れて劣化し、やがてひび割れてしまいます。
薄い金属板や画用紙の同じ部分を何度も折り曲げ続けると、やがて切れてしまうのと同じです。
特に、サイズが合っていない革靴はシワが深くなりがちなので、ひび割れが起きやすい傾向にあります。
原因その 3. クリームの塗りすぎによる革の傷み
3 つ目は、「クリームの塗りすぎによる革の傷み」です。
革靴の手入れには、革靴専用のクリームを使います。
このクリームは革に水分や油分を与えるためのもので、一見するとたくさん塗っても問題ないように思えるかもしれません。
しかし、表面に残ったクリームは空気に触れることで酸化します。
このクリームが酸化する過程で、革が傷んで固くなってしまうようです。
革が固くなると、歩いたときの足の動きに耐えきれず、結果ひび割れが起きてしまいます。
革靴をひび割れさせないための対策
革靴がひび割れを起こさないよう、上記の 3 つの原因をカバーするように対策をしておきます。
ひび割れは一度入ってしまうと、完全に元どおりにはなりません。
ひび割れが起きても補修できますが、時間がかかってしまいますし、革の風合いがなくなるのも嫌ですよね。
愛用している革靴にひび割れが起きないよう、対策しておきましょう!
ひび割れ対策その 1. 脱いだらブラッシングしてホコリを落とす
靴を一日履いたあと靴の表面を見てみると、ホコリがたくさんついていることがわかります。
このホコリは、革の水分や油分を吸収し、革の乾燥を進めてしまいます。
玄関先にブラシを一本置いておき、脱いだらブラッシングしてホコリを落とすようにします。
簡単なことですが、これだけでひび割れの対策になります。
ひび割れ対策その 2. シューキーパーを入れる
歩くたびに同じシワに力が加わり続けると、どんどんシワが深くなります。
シワが深くなりすぎるのを防ぐために、シューキーパーを入れてシワを伸ばします。
手入れのときにシューキーパーを入れると、シワの部分にクリームが入りやすくなって、よりひび割れが起きにくくなります。
「革靴には欠かせないシューキーパーの選び方とおすすめ紹介」の記事でシューキーパーの選び方を紹介しています。
どんなシューキーパーがいいか分からない方は、ぜひ参考にしてみてください。
ひび割れ対策その 3. 月に 1 回ほどの頻度でクリームを使って手入れする
革に水分と油分を与えるため、月に 1 回ほどの頻度でクリームを使った手入れをします。
使用する道具や手順は、「忙しい人のための簡単にできる革靴お手入れ術」の記事で紹介しています。
手入れの仕方がわからない方は、参考にしてみてください。
革を傷めてしまわないよう、クリームを塗り過ぎたと思ったら布でしっかりと拭き取るようにしましょう。
おわりに
ここまで読んでいただきありがとうございました。
この記事では、ひび割れを綺麗に補修する方法を紹介しました。
補修できると考えると、安心して手入れをサボってしまいそうです。
しかし、本文で書いたようにひび割れを完全に元どおりにすることはできません。
ひび割れしないように、日頃から対策をすることが何より大切です!
ブラッシングのところにあるコインローファーはどこのものか知りたいです。
アレンエドモンズのものでしょうか?オールデン?とても素敵ですね
コメントありがとうございます。
ブラッシングのところに載っているのは、サンクリスピンというブランドのローファーです!
革のシボ感とツヤ感に独特な雰囲気があって、とても気に入っています!
ありがとうございます!伝説的な靴ですね!なかなかないという、流石です!