靴磨きに使用する布の種類と巻き方、万能布を安く用意する方法

革靴のお手入れをする際、さまざまな場面で必要になる「布」。

一口に「布」といっても、汚れ落としに向いた布、仕上げの磨きに向いた布はそれぞれ特徴が異なるため、目的ごとに使い分けるのが理想です。

とはいえ、趣味で靴磨きを楽しむのであれば、そこまで厳密に使い分ける必要はありませんし、全部揃えようとすると結構なお値段になってしまいます。

そこで「面倒くさいから 1 種類だけで全部済ませたい!」というズボラな方におすすめしたい、どんな場面でも使用できる万能布があります。

さらに、その万能布をかなり割安に用意する方法があります。

この記事では、「どういう特徴の布が万能なのか」という理屈のところを説明した後に、その布を安く用意する方法をご紹介します。また、指に巻きやすい形にカットして、実際に指に巻く方法も解説します。

前提知識:万能布はどういう特徴の布?

靴磨きで布を使う場面は主に以下の 3 つです。

  • リムーバーを使った「汚れ落とし」
  • 乳化性クリームを塗った後の「仕上げの磨き」
  • ワックスを使った「鏡面磨き」

参考:忙しい人のための簡単にできる革靴お手入れ術
参考:鏡面磨き(ハイシャイン)の方法とその落とし方

どのような布が適しているかは、3 つの場面でそれぞれ異なります。

たとえば、「汚れ落とし」に使う布は、リムーバーのような液体を染み込ませて使うので、吸水性が大事です。また、汚れを効率的に絡め取ってくれる織り目が粗い布が向いています。

「仕上げの磨き」はすこし力をいれることになるので、革の表面が傷つかないようなフワッとした手触りの布、あるいは力を入れても傷がつかないような織り目の細かい布を使います。液体を使うわけではないので、吸水性はあってもなくてもかまいません。

「鏡面磨き」では、ワックスを伸ばすために水を使うので、吸水性は必要になります。また、仕上がりがきれいになるように、織り目の細かい布を使います。

簡単に整理すると、

  • リムーバーを使った「汚れ落とし」
    • 織り目の粗く、かつ吸水性が高い布が向いている
  • 乳化性クリームを塗った後の「仕上げの磨き」
    • 織り目の細かい布が向いている(あるいはフワッとした手触りの布)
  • ワックスを使った「鏡面磨き」
    • 織り目の細かく、かつ吸水性が高い布が向いている

となります。

布の織り目の粗さ / 細かさという視点で見ると、「汚れ落とし」には織り目の粗い布が向いているのに対し、「仕上げの磨き」「鏡面磨き」には織り目の細かい布を使います。

ただし、織り目の細かい布を「汚れ落とし」に使っても、汚れが落ちないわけではありません。効率的ではないというだけです。実際、織り目の細かい布で汚れ落としをされる方もいらっしゃいます。

逆に、織り目の粗い布を使って磨き、革を傷つけてしまうのは避けなければいけません。

つまり、汚れ落としの効率を多少犠牲にしてでも、織り目が粗いものではなく、細かいものを使ったほうがいいのです。

これを踏まえると、織り目が細かく、かつ吸水性が高い布が、どんな場面でも使える万能布ということになります。手触りが良ければ、なお良しです。

靴磨きに使う 4 種の布を比較

織り目が細かく、かつ吸水性が高い布が、どんな場面でもある程度使い回せる布であるということはわかりました。

つぎに、靴磨きによく使われる 4 種類の布をそれぞれ比較してみましょう。

使い古した T シャツ

まずは使い古した T シャツです。

本ブログでも度々登場していますし、他のサイトでも靴のお手入れに使い古した T シャツが使われている場面があります。

使い古した T シャツは、吸水性が高い & 織り目が粗いので、汚れ落としに向いています

“使い古した” というところがポイントで、何度も着用して何度も洗った T シャツは、新品の状態と比べて吸水性が高くなります。また、着用するために作られていることから、通気性を確保するために織り目が比較的粗く作られています。

リムーバーを染み込ませて拭くと、粗い織り目が汚れやクリームをよく絡め取ってくれます。

さらに、使い古した T シャツは生地の表面が毛羽立ち、クタクタになっていて手触りが柔らかくなっています。そのため、仕上げの磨きにも使うことができます。余分なクリームを拭き取ったり、軽くササッと磨く程度であれば十分に使えます。

汚れ落としにも仕上げの磨きにも使えるので、鏡面磨きをしないのであれば、使い古した T シャツだけで事足ります。

使い古した T シャツがよく引き合いに出される理由がわかりますね。

綿(コットン)100% の布

使い古した T シャツも通常は綿 100% のものを使いますが、こちらは “使い古していない” 綿 100% の布という意味で区別しています。

具体例として挙げられるのは、モウブレイから販売されているリムーバークロスです。(さすがに新品の T シャツを使う方はいないと思いますので…)

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その名のとおり、リムーバーを使った汚れ落としに向いている布で、吸水性が高く、程よく粗い織り目が汚れを絡め取ってくれます。

ただし、織り目が粗く、かつ生地の表面が固くて少しゴワっとしているため、仕上げの磨きや鏡面磨きには不向きです。

フランネル生地(ネル生地)

フランネル生地は略して “ネル生地” とも呼ばれ、こちらも通常は綿 100% です。ただし、他の綿の布と比べて織り目が細かく作られています。

表面を毛羽立たせた生地で、ふわふわした手触りが特徴です。ベビー用品などに使用されることが多いようです。ネルシャツなんかもありますね。

織り目が細かい & ふわふわした手触りなので、仕上げの磨きに最適です。この生地で靴を磨くと、表面が滑らかになります。

また、吸水性も高いので、鏡面磨きに使うこともできます

そう、この織り目の細かさと吸水性を兼ね備えたフランネル生地こそ、どんな場面にも使用できる万能布です。

織り目が細かいので、T シャツやリムーバークロスに比べて、汚れ落としには向いていません。ただ、実際にはフランネル生地を汚れ落としにも使用している方は多いようです。

次章では、このフランネル生地を安く用意する方法をご紹介します。

パンスト

最後に、意外と知られていませんが、女性用のパンツストッキングも靴磨きに使用できます。

男性の方には馴染みがないものですが、よく見ると織り目がとても細かくなっており、これで磨くとかなりピカピカになります。

伝線したものなどをパートナーに譲ってもらうことができれば、ぜひ一度試してみてください。

吸水性がないので、汚れ落としやワックスを使用した靴磨きには向いていません。

さて、ここまでご紹介した布の種類と用途の向き不向きをまとめると、このようになります。

種類 \ 用途 汚れ落とし 仕上げの磨き 鏡面磨き
使い古した T シャツ
綿 100% の布(リムーバークロス)
フランネル生地(ネル生地)
パンスト

フランネル生地の布があれば、汚れ落としから鏡面磨きまで、これだけで済ますことができます。

あるいは、仕上げの磨きと鏡面磨きにはフランネル生地を使い、汚れ落としには使い古した T シャツやリムーバークロスを使うというのもアリです。

ひとまず、フランネル生地さえあればなんとかなることはお分かりいただけたかと思います。

ただ、靴磨き用品として売っているフランネル生地の布は、結構お値段します。というわけで、つぎはこのフランネル生地を割安で用意するをご紹介します。

万能布「フランネル生地」は手芸店で買って自分でカット

見出しのとおりですが、フランネル生地の布は手芸店で素材として販売されている布を購入して、使いやすいサイズにカットすれば、かなり安く用意することができます。

1. 手芸店で生地を購入する

フランネル生地を購入する場合は、両面起毛のものがおすすめです。両面起毛であれば、両面とも使用できるので、無駄なく使用することができます。

今回は、この商品を購入しました。

また、同時に購入しておくといいのが、切り口がギザギザのピンキングハサミです。

経験がある方も多いと思いますが、普通のハサミでカットすると糸くずが出ます。これが意外と厄介で、靴の表面に糸くずが付いたり、糸くずが舞って鼻がムズムズします。

このハサミを使ってギザギザにカットすることで、糸くずが落ちにくくなります。

使い古した T シャツやリムーバークロスをカットする場合も、このピンキングハサミでカットすると糸くずが出にくくなるので、一本あると便利です。

使いやすいサイズにカットする

購入した生地は使いやすいサイズにカットして使用します。

一般的には 8cm × 50cm くらいが使いやすいといわれています。とはいえ、使うときの巻き方にもよるので、お好みのサイズでかまいません。

私の場合は、人差し指の長さくらいの幅、両手分くらいの長さを目分量でカットしています。

このサイズが次章でご紹介する巻き方に適したサイズになっています。

カットすると、このくらいの量になりました。

数えると 26 枚ほど。私の場合は、週一枚使うとしても半年くらいはもつ量です。

某有名シューケアメーカーのポリッシングクロスと、手芸店で購入した生地とを比較してみます。

種類 価格 大きさ 1 平方 cm あたりの値段
靴磨き用として販売されているポリッシングクロス 432 円 12cm × 17cm 2.12 円
手芸店で購入した場合 719 円 70cm × 100cm 0.1 円

手芸店で購入したものをカットして使うほうが、圧倒的に割安なのがお分かりいただけると思います。

せっかく安く用意するのであれば、使うときにも効率的に使いたいですよね?

というわけで、つぎはカットした布を効率的に使える巻き方をご紹介したいと思います。

カットした布の巻き方

靴磨きあるあるかもしれませんが、適当な大きさの布を適当に使っていくと、使ったのか使っていないのかよく分からない箇所ができてきます。

そういったことがないよう無駄なく使用するには、長くカットした布を使用し、一箇所使っては新しいところが指先に当たるようにズラして巻き直す…という風に順番に使っていくのがベストです。

また、布を巻くときはピシッとシワがないように巻きます。

指に巻いたとき、シワがあるとクリームが均一に塗れません。また、鏡面磨きの場合は、ワックスによるコーティングが均一にならず、綺麗に仕上げることができません。

私は 2 パターンの巻き方を使い分けているので、それぞれご紹介します。

かんたんな巻き方

ひとつ目は、手軽にサッと巻く方法。

私は、汚れ落としや軽い仕上げの磨きの際にはこの巻き方をしています。

  1. 人差し指に布を被せる
  2. 指先にシワがないようにピンと張る
  3. 手の甲側でネジネジする
  4. ネジネジした長い部分を親指で押さえて、完成です!

かんたんな巻き方の動画

しっかりした巻き方

前述の巻き方は、しばらく使っているとちょっとずつズレてくるので、丁寧に仕上げの磨きをするときや鏡面磨きをするときにはこちらの巻き方をしています。

長い間つけていてもズレにくく、前述の巻き方と違って親指で布を押さえておく必要がないので疲れにくいです。

  1. 人差し指に布を被せる
  2. 指先にシワがないようにピンと張る
  3. 手の甲側でネジネジする
  4. ネジネジした長い部分を、ぐるっと一周する
  5. ネジネジした長い部分を、ぐるっと一周した輪っかに入れ込む
  6. 入れ込んだ長い部分を、手の甲側にグッと引っ張る
  7. 完成です!

しっかりした巻き方の動画

使い終わった布は…

使い終わった布は再利用ができません。

一度付いてしまったワックスやクリームは、衣料用洗剤ではなかなか落ちないのです。

それだけでなく、一度洗ってしまうと素材の柔らかさも失われてしまいます。もったいない気もしますが、使い終わった布は捨ててしまい、なくなったら新しいものを用意しましょう。

おわりに

靴磨きにはいろいろな道具を使いますが、布は必ず必要になるものです。そうはいっても、「たくさん種類があって何を使ったらいいのか、よく分からない」という方もなかにはいらっしゃると思います。

そんな方には、まずはフランネル生地を使うことをおすすめします。また、靴磨き用品として販売されている布は少しお高めなので、手芸店で購入することで安く用意することができます。

靴磨きの布に関してお困りの方に、この記事が役に立てば幸いです。

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