【革靴メンテナンス講座】牛革の種類とお手入れの基本

革靴には、さまざまな動物の革が使われます。

豚の革や馬の革、なかにはクロコダイル革などの珍しい革もありますが、圧倒的に使われることが多いのが「牛革」です。百貨店やセレクトショップで見かける革靴は、牛革で作られているものがほとんどです。

すなわち、牛革についての理解を深めることは、革靴についての理解を深めることと言っても過言ではありません!

というわけで、今回は牛革の特徴や種類、手入れの方法などをご紹介したいと思います。

牛革の基礎知識

牛革がよく使われるのは、他の革や他の素材に比べて手に入りやすいことが大きな理由の 1 つです。

牛肉は世界で最もポピュラーな食肉です。その副産物として多くの牛革が流通しているために、簡単に入手することができます。

ただ、単に手に入りやすいということだけでなく、他にも以下のような特長があります。

牛革の長所その 1:使い込むほどに味が出る

1 つ目は、使うほどに味わいが出てくることです。

たとえば、ビニール製品は使用すればするほど汚れてボロボロになっていきます。新品が一番良い状態で、だんだんと劣化していきます。

一方、牛革は使い込むことで艶が出たり色が濃くなったりと変化があり、アンティーク家具のような深い味わいが出てきます。新品が一番良い状態ではなく、使い込むことでどんどん魅力が増していきます。

牛革の長所その 2:肌触りがいい

2 つ目は、肌触りがいいことです。

牛革を触ってみると、金属やプラスチックのようにカチコチに硬いわけではなく程よく柔らかい感触があります。また、革の表面はしっとりとなめらかな触り心地です。

この革の柔らかな感触となめらかな触り心地で、持つと手にスッと馴染むような感覚があります。

牛革の長所その 3:丈夫である

3 つ目は、簡単に破れない丈夫さがあることです。

牛革には繊維がみっちりと詰まっており、引っ張って破ろうとしてもなかなか破れません。1mm ほどの薄い革でさえ手で破るのは困難なほどです。

「良い革靴は一生モノ」とよく言われる理由は、牛革の丈夫さにあるのです。

牛革の短所:乾燥や水に弱い

牛革は、「乾燥」と「水」に弱いとされています。

要するに、潤いがなくなってしまうのもよくないし、潤いすぎるのもよくないということです。

革には水分と油分が含まれています。乾燥して水分と油分が抜けきってしまうと表面がガサガサになり脆くなってしまいます。

一方、雨に濡れるなどして水分を吸収しすぎると、乾く過程で収縮・硬化してしまい、形が崩れてしまったりヒビ割れを起こしたりします。

また、油分を多く含みすぎても、形が崩れてしまったりカビが発生したりしてしまいます。

牛革とスエードの違い

牛革は、そのまま解釈すれば「牛の革」ということになりますが、「牛の革」のなかでも特に吟面と呼ばれる表側のツヤツヤした革を指すことが多いようです。

一方、スエードは床面と呼ばれる裏側のザラザラした革を指します。豚革や馬革であっても、床面を使用している革はスエードと呼ばれます。

正確には、牛から取れたスエードも「牛革」になりますが、この記事では吟面を使った牛革を「牛革」と呼ぶことにしています。

牛革の種類

牛革のなかにも、牛の年齢や性別、去勢の有無などによって種類が分かれています。

牛の年齢が若ければ若いほど革は薄くて柔らかく、歳を重ねるごとにだんだんと厚く固くなります。

この章では、牛革の主な種類を年齢順に沿って見ていきたいと思います。

ベビーカーフ

生後 3 ヵ月以内の仔牛から取れる革をベビーカーフと呼びます。

薄くて柔らかく、透明感が感じられるような色味が特徴です。

生後 3 ヶ月の仔牛は体が小さいため採取できる量も限られています。牛革のなかで最も高級な素材と言えます。

基準 ランク
柔らかさ ★★★★★★
厚さ ★☆☆☆☆☆
価格 ★★★★★★

カーフ

生後 6 ヵ月以内の仔牛から取れる革をカーフと呼びます。「カーフレザー」や「カーフスキン」とも呼ばれます。

比較的若い牛のため革の肌目が細かく、上品な艶があるのが特徴です。年齢を重ねた牛の革よりも肌触りがなめらかで、牛革のなかでも高級素材として扱われています。

ランク
柔らかさ ★★★★★☆
厚さ ★☆☆☆☆☆
価格 ★★★★★☆

キップ

生後 6 ヶ月〜 2 年以内の仔牛から取れる革をキップと呼びます。「キップレザー」や「キップスキン」とも呼ばれます。

カーフに比べると厚みと固さがありますが、カーフと同じく高級素材として扱われています。

基準 ランク
柔らかさ ★★★★☆☆
厚さ ★★☆☆☆☆
価格 ★★★★☆☆

カウ

生後 2 年以上の出産を経験した雌牛の革をカウと呼びます。「カウハイド」とも呼ばれます。

カーフやキップに比べると厚くて固く、表面が少しガサガサしているような印象です。

基準 ランク
柔らかさ ★★★☆☆☆
厚さ ★★★☆☆☆
価格 ★★☆☆☆☆

ステア

生後 2 年以上の去勢された雄牛から取れる革をステアと呼びます。「ステアハイド」とも呼ばれます。

Steer(ステア)は食用牛の意味があり、この年齢で食肉加工されることが多いようです。そのため、一番流通量が多く入手しやすいのが、このステアなのだそうです。

基準 ランク
柔らかさ ★★☆☆☆☆
厚さ ★★★★☆☆
価格 ★★☆☆☆☆

ブル

生後 3 年以上経った去勢していない雄牛の革をブルと呼びます。「ブルハイド」とも呼ばれます。

牛革のなかでも一番固くて厚い、ある意味最強の革といっていいでしょう。去勢をしていないので喧嘩をしまくり、傷が多いのが難点です。

見た目が重要視される靴やカバンに使われることはあまりないようで、耐久性が求められる工業製品に使用されるようです。

基準 ランク
柔らかさ ★☆☆☆☆☆
厚さ ★★★★★☆
価格 ★★☆☆☆☆

牛革に手入れが必要な理由

牛革は優れた素材ですが、弱点の「乾燥」と「水」から守らなければ、なめらかな肌触りも丈夫さも失われ、使い込むほどに味わいが深くなる経年変化も楽しめません。

弱点の「乾燥」と「水」から守るために、手入れは主に以下のことをおこないます。

  • 水分と油分を補給する
  • 防水する

水分と油分の補給にはクリームを使用します。クリームを塗ることで乾燥しすぎを防ぎます。

クリームで水分の補給をおこなったら、今度は雨に濡れて水分を吸収しすぎないように、防水スプレーを使って防水します。

手入れに必要な道具

手入れには以下の 4 つの道具を使います。

ホコリやチリを落とすためのブラシ

クリームを塗る前に、ブラシを使って表面についたホコリやチリを落とします。

ブラシには、豚毛や山羊毛、化学繊維の毛などさまざまな毛のものがありますが、一番適しているのは馬毛のブラシです。

毛の柔らかさとしなやかさを持つ馬毛のブラシであれば、ホウキのようにササッと表面のホコリやチリを払い落とすことができます。

全体をしっかりブラッシングできるよう持ち手がある程度大きいものがおすすめです。

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水分と油分を補給するためのクリーム

先ほども触れましたが、水分と油分を補給するためのクリームです。

クリームのなかでも、デリケートクリームと呼ばれるものがおすすめです。

デリケートクリームというのは、水分と油分で革に栄養を与える「乳化性クリーム」と呼ばれるクリームの 1 種です。

デリケートクリームは、通常の乳化性クリームと比べて水分の配合量が多く、仕上がりがさらりとしています。財布やカバンなどよく手に触れるような革製品にも使用できるので、汎用性が高いのも魅力です。

この記事では、コロニルのデリケートクリームを使用しています。

クリームを塗るための布

クリームを塗るのに使用します。フランネル生地がおすすめですが、使い古した T シャツなどでも代用できます。

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靴磨きに使用する布の種類と巻き方、万能布を安く用意する方法」でフランネル生地を割安で用意する方法をご紹介しています。

防水性を高めるためのスプレー

防水スプレーには、シリコン系とフッ素系がありますが、革に使用するのであればフッ素系のスプレーがおすすめです。

シリコン系のスプレーは、表面に膜を作ることにより、水の浸透を防ぎます。表面をコーティングするようなイメージなので、革の風合いが損なわれます。また、通気性が失われるため、革が劣化する恐れがあります。

対して、フッ素系スプレーは、革の繊維の一本一本に水の分子よりも細かいフッ素樹脂を浸透させることで、水の浸透を防ぎます。通気性や革の風合いを損なうことなく防水効果を高めることができます。

この記事では、コロニルの防水スプレーを使用しています。

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手入れの手順

手入れは、

  • ブラッシングする
  • クリームを塗る
  • 防水スプレーを吹きかける

の 3 ステップでおこないます。

ちなみに、ここで紹介している方法は、靴だけではなく、財布やベルト、ジャケットなどに幅広く応用することができます。

手順 1:ブラッシングする

ブラシで表面のホコリやチリを払い落とします。

手順 2:クリームを塗る

つぎに、クリームを塗ります。

布を指に巻いてクリームを取り、全体に満遍なく塗り伸ばしましょう。

一度クリームを塗ったら、余分なクリームを拭き取るために、布の乾いた部分で乾拭きします。

手順 3:防水スプレーを吹く

さいごに、防水スプレーを吹きます。

スプレーによって使い方が異なる場合がありますので、事前に使い方を確認しておきましょう。

コロニルの防水スプレーの場合は、対象から 30cm 以上離し、全体をスプレーします。

一度乾かして再度全体をスプレーします。

おわりに

牛革は魅力溢れる素材です。

ただし、手入れを怠れば、肌触りや丈夫さなどが失われてしまいます。

手入れも革靴の醍醐味の一つです。お手入れをしながら、革靴ライフを存分に楽しみましょう。

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