長持ちさせるために、新品の靴の手入れと履く前にするべき 2 つのコト

新品の革靴を買ったときは、すぐにでも履きたい気持ちになりますよね。

でも、ちょっと待ってください!

新品の靴は、履く前にきちんと手入れをしておきましょう。

「新品で汚れてもいないのに、なんで手入れの必要があるの?」と思われるかもしれませんが、実は、靴を永く履けるかどうかは、履き下ろす前の手入れにかかっている、といっても過言ではありません。

この記事では、新品の靴の手入れが必要な理由と、手入れの具体的な方法について解説します。また、手入れの他に履き下ろす前にしておいたほうがいいことや、新品の革靴についての Q&A も掲載しています。

なぜ新品の靴に手入れが必要なのか

新品の靴を手入れする目的は 2 つ、「保湿」と「防水」です。

新品の靴は革が乾燥した状態になっています。

私が知る限り、革靴は、製造が終わった後、クリームで保湿されてワックスでコーティングされています。ただ、そのあと保管、搬送され、店頭に並んで…と、実際に手元に届く頃には、かなりの時間が経過しています。せっかく塗られたクリームやワックスも、いざ履くタイミングでは劣化していて、乾燥した状態になっています。

乾燥は、革靴にとって大敵です。

「保湿」と「防水」は、乾燥した靴に起こりやすい以下の問題を防ぐためにおこないます。

1. ひび割れを防ぐため

まず、乾燥した状態で履いてしまうと、踏み込んだときに履きジワに細かいヒビ割れができてしまう可能性があります。

履いた直後に大きくヒビ割れてしまう、というわけではありません。ただ、細かいヒビでも、一度ヒビができてしまうと、履き込むうちにだんだんとヒビ割れが大きくなり、靴の寿命が一気に短くなります。

履いた瞬間に細かいヒビ割れが起きないように、乳化性クリームで「保湿」をしておきます。

2. 染みを防ぐため

また、乾燥していると水分が染み込みやすいため、シミができやすいです。

シミは、主に色のついた水(たとえば、泥水やジュースなど)が革に染み込むことによってできます。日頃からしっかりクリームが塗られている革は、繊維の間に油分がしっかり入っているため、シミができにくいと言われています。逆に、新品の靴はシミができやすい状態です。

履き下ろしてすぐ、何かをこぼしてシミができてしまったら…と想像するだけでもテンションが下がりますよね。シミができるのを避けるためにも、防水スプレーを使って最低限の「防水」はしておきましょう。

参考:革靴にできた雨染みの消し方・予防

新品の靴の手入れに必要な道具

それでは、実際に新品の靴に「保湿」と「防水」を施すための道具をご紹介します。

ご紹介する道具は、どれも一般的な靴磨き用品です。すでに持っている方は、読み流していただいてかまいません。

初めて革靴を手入れされる方は、これを機にまとめて購入しておくといいでしょう。新品の手入れだけでなく、定期的な手入れでも活躍してくれます。

シューキーパー

シューツリーとも呼ばれます。こちらは、手入れの際に靴の中にいれておくことで、靴の形が固定され、乳化性クリームなどが塗りやすくなります。

また、着用したあとに靴に入れておくことで、ソールの反りを軽減して靴の形をきれいに保っておくことができます。

馬毛ブラシ

靴の表面についたホコリやチリを払い落とすのに使うブラシです。事前にホコリやチリを落としておくことで、乳化性クリームの効果が高まります。

毛先に程よいコシがあるため、馬毛のブラシが最適です。

今回手入れするのは新品の靴です。そこまでホコリやチリがついている状態ではないので、布で乾拭きするだけでも事足ります。ただ、今後定期的に手入れをしていく上では必須のアイテムですので、あわせて購入しておくとよいでしょう。

乳化性クリーム

「保湿」の要、乳化性クリームです。

色付きのものを使用すると靴の色が変わってしまうことがあるので、はじめて購入する場合は、無色のものを選ぶようにしましょう。

この記事では、浸透力の高いコロニルのシュプリームクリームデラックスを使用しています。おすすめです。

コスパを重視するのであれば、サフィールのビーズワックスファインクリームがおすすめです。

乳化性クリームを塗り込んだり、余分な乳化性クリームを拭き取るのに使います。

専用の布も市販されていますが、使い古した T シャツで代用することもできます。

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布はすぐに消耗してしまうので、まとめて用意するのも手です。「靴磨きに使用する布の種類と巻き方、万能布を安く用意する方法」で割安に布を用意する方法をご紹介しています。

防水スプレー

乳化性クリームを塗ったあとは、「防水」しておきます。

防水スプレーにもいろいろと種類がありますが、革に本来備わっている通気性を損なわないフッ素系がおすすめです。

この記事では、コロニルの防水スプレーを使用しています。フッ素系で、かつシダーウッドオイルが含まれているので、防水しながらも、しっとりとした革の風合いを残しておくことができます。

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新品の靴の手入れ方法 4 ステップ

それでは、手入れの方法をご紹介します。簡単 4 ステップです。

1. 靴紐を外して、シューツリーを入れる

まずは、手入れの邪魔になる靴紐を外しておきましょう。

外羽根(ダービー)の場合は、全て外してしまってかまいません。内羽根(オックスフォード)の場合は、全部はずしてしまうと再度通すのが大変なので、一つだけ通した状態で残しておくといいでしょう。

その後、シューツリーを入れて形を整えます。

「1. 靴紐を外して、シューツリーを入れる」の動画

2. 馬毛ブラシでホコリを落とす

次に、馬毛ブラシでホコリを払い落とします。新品なので、ホコリまみれではありません。

ササッと軽くブラッシングするだけで十分です。

ブラシを持っていない方は、布で乾拭きしましょう。

「2. 馬毛ブラシでホコリを落とす」の動画

3. 乳化性クリームで保湿する

ホコリを払い落として綺麗にした革を、乳化性クリームで保湿します。

指にクロスを巻いて、これぐらいのクリームを布にとります。

靴磨きに使用する布の種類と巻き方、万能布を安く用意する方法」で布の巻き方をご紹介していますので、はじめての方はこちらをご参照ください。

右側、左側、つま先、甲と順番に、乳化性クリームを取っては塗ってを繰り返します。

履いたときに足に当たって痛い箇所があれば、当たる箇所の裏地(ライニング)にも乳化性クリームを塗っておきましょう。少し柔らかくなって馴染みが良くなります。

「3. 乳化性クリームで保湿する」の動画

4. 防水スプレーを吹いて磨く

乳化性クリームでしっかりと保湿したら、防水スプレーを吹きます。

使い方はスプレーによって異なります。この記事で使用しているコロニルの防水スプレーの場合は、20 ~ 30 cm ほど離して、全体にスプレーを吹き、一度乾かしてから再度スプレーを吹きます。

最後に綺麗な布で磨けば、完成です!

「4. 防水スプレーを吹いて磨く」の動画

手入れの他に新品の革靴を履く前にしたほうがいいこと

「さぁ、履き下ろそう!」とその前にあと 2 つほどしておくことがあります。

もう少しだけお付き合いください。

トゥスチールを付ける

履き始めの革靴のアウトソールはとても固く、つま先が過剰にすり減って、すぐに修理が必要になる場合があります。

そこで「トゥスチール」というものを付けることで、つま先がすり減るのを防止することができます。

修理屋さんに行けば、3000 円ほどで付けることができます。

人は歩く動作のなかで、地面を蹴り上げます。アウトソールが固いと、蹴り上げるときにつま先がこすれて、どんどんすり減ってしまいます。

つま先が削れると見た目が悪いですし、すぐにオールソールや革やゴムのパッチを当てる修理が必要になってしまいます。

個人的には、トゥスチールが必要なのは、グッドイヤー・ウェルト製法、またはハンドソーン・ウェルト製法の靴だと思っています。

これらの製法の靴は、履き始めのソールが固く、つま先が比較的減りやすいからです。

逆に、マッケイ製法やセメント製法の靴の場合は、履き始めからソールの反りが良く、つま先が過剰にすり減ってしまうことがないため、トゥスチールは不要です。

また、製法に関わらず、ラバーソールにはトゥスチールの取り付けができません。ただし、ラバーはレザーよりも比較的減りにくく、新品の状態で補強をする必要はありません。

ちなみに、トゥスチールを付けて歩いたとき「カチカチ」という音が気になる方は、ラバーやレザーで補強する方法もあります。

オールソールとは

靴底全体を交換する修理のこと。

ヒールがすり減った場合は、トップリフトというかかとの層だけを交換することができます。

しかし、つま先は靴底全体と一体で作られているので、すり減ってしまった場合は交換ができません。

革やゴムなどのパッチを当てる修理をするか、ソールを全て張り替えるオールソールをする必要があります。

履き下ろしのシワ入れ

さらにもうひとつしておくといいのが「シワ入れ」です。

靴の履きジワは、足を踏み込んだときに、靴が曲がることによってできます。

なかには足の甲の高さが左右で違う人もいます。そういう人の場合、足の甲と靴のアッパーとの隙間が左右で違ってくるため、左右で履きジワの入る箇所が違ってきます。

私もそのうちの一人で、私の場合は甲が薄く、左右で高さも異なるため、既成靴のサイズが合わないことが多いのです。そのままの状態で履いてしまうと、たいてい左右で履きジワの入り方が違ってしまいます。

そして、一度入った履きジワは、もう戻りません。

サイズがあっていれば、シワ入れしなくとも自然な履きジワが入るのですが、「いつも左右でシワの入り方が違って嫌だな…」という方は、履き下ろすときに履きジワのクセをつける「シワ入れ」をしておきましょう。

シワ入れの方法は、靴下を 2 重や 3 重履いて足をパンパンにした状態で靴を履きます。靴下を重ねて履くことで、足と靴の間の余分なスペースがなくなり、普段履くよりも比較的きれいで自然な履きジワがつくはずです。15 分くらい歩けば、シワのクセがつきます。

「もっと履きジワにこだわりたい!」という方は、ペンを使用したシワ入れの方法があります。私は、シワ感をより楽しめるコードバン素材の靴の場合、この方法を実施しています。

ペンを使用したシワ入れの方法は、こちらの記事で分かりやすく解説されています。興味のある方は、ぜひ試してみてください。

履きジワも革靴の醍醐味、綺麗に入っていた方が愛着が湧きます。

新品の革靴に関する Q&A

最後に、新品の革靴に関してよくある疑問を Q&A 形式でご紹介します。

そのほかにも質問事項などありましたら、コメントでお気軽にご質問ください。

Q. ハーフラバーは貼ったほうがいいの?

レザーソールがツルツル滑って気になる方は、貼りましょう。

こちらも、トゥスチールと同じように修理屋さんで貼ってもらうことが可能です。

雨の日にレザーソールを履くと、とても滑りやすいです。雨の日用として使用する靴の場合は、貼っておいたほうがいいでしょう。

Q. ソールを曲げてクセづけした方がいいの?

履き始めはソールが固いので、クセづけをしたくなる気持ちもわかりますが、しない方がいいでしょう。

自分の足の屈曲以上にソールが曲がってしまうと、とても歩きにくくて疲れてしまいますし、形も崩れます。

何度か履いて歩いて、自分の足にあった自然なソールのクセづけをしましょう。

Q. スエードレザーの靴はどうしたらいいの?

スエードレザーやヌバックレザーは、スムースレザーと違ってヒビ割れてしまうことはありませんので、乳化性クリームを使用したお手入れは不要です。

ただし、水分を吸収しやすい素材のため、履きおろす前に防水スプレーは吹くようにしましょう。

おわりに

これで、新品の靴を心置きなく履くことができます、お疲れさまでした。

すぐに履きたい気持ちを抑えて、お手入れをしたり履きジワをつけたりすると、履く前から愛着が湧いてきます。愛着が湧いた革靴は、お手入れも定期的にしたくなりますし、大切にしたい気持ちが出てくるので、結果的に靴の寿命も長くなります。

新品の状態から、しっかりと手入れして履き込んだ革靴は、あなたにとって特別な一足になることは間違いありません。

ここまで読んでいただきありがとうございました。

コメントはこちらから

  • 革靴選び~お手入れ方法まで大変参考にさせていただいています。

    トゥスチールですが、ラバーソールの靴にも取りつけたほうがよいでしょうか。

    • コメントありがとうございます!
      ラバーソールはレザーソールに比べてすり減りにくいので、トゥスチールをつける必要はないかと思います。

      • ラバーソールにはトゥスチールを付けることはできないのではないですか?
        ゴムにビスをさしてもすぐに抜けてしまうのでは?
        以前靴修理をやっていたのでトゥスチールはレザーソールや、ハーフラバーが付いているレザーソールのみしか外れてしまうためできませんでした。

        • コメントありがとうございます。

          たしかに、ラバーソールにはトゥスチールの取り付けはできず、その旨の記載が漏れていました。
          ラバーソールにはトゥスチールの取り付けができないことを追記させて頂きました。

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