「革靴って、洗ってもいいの?」と聞かれることがあります。
革靴は水でジャブジャブ洗うと革の風合いが変わってしまいそうで、洗うことになんとなく抵抗を感じる方が多いようです。
特殊な革でなければ、正しい手順で行うことで、革の風合いを失うことなく洗うことができます。
水洗いすることで、靴についた臭いやカビをスッキリ取ることができます。
この記事では、私のお気に入りの一足(15 万円ほど!)を使って、正しい洗い方を解説したいと思います。
この記事のもくじ
注意!水洗いできない素材
下記に該当する素材については、水洗いを控えてクリーニング等を検討してみてください。
ヌメ革、水性染料を使用した牛革
ヌメ革や水性染料を使用した牛革は、水染みができて目立ってしまう可能性があるので、水洗いは控えたほうが無難です。
クロコダイルなどのエキゾチックレザー
エキゾチックレザーはデリケートなので、ヘタに扱うと独特の風合いがなくなってしまったり、逆に染みが広がってしまったりします。往々にしてエキゾチックレザーの製品は高価なので、プロのクリーニング屋に相談することをおすすめします。
エナメル、コードバン
エナメルやコードバンも艶がなくなってしまう可能性があるので、水洗いは控えましょう。
スエードの靴の洗い方
この記事では、スムースレザーという一般的な革を使った靴の洗い方を紹介しています。
表面が起毛しているスエードレザーを使った革靴を洗う場合は、ちょっと違った道具を使わなくてはいけません。
スエードレザーの靴の洗い方は下の記事で紹介しているので、スエード靴を洗うときは参考にしてみてください。
靴の汚れを落としたいときは
靴が泥などで汚れてしまって、水洗いを検討されている方もいらっしゃるかもしれません。
もちろん水洗いでも汚れを落とすことはできますが、それ以外の比較的簡単な方法で落とすこともできます。
汚れの落とし方については下の記事で解説していますので、汚れを落としたい方はよければ参考にしてみてください。
STEP 1.「馬毛ブラシでゴミを払い落とす」
(以降の動画でも片方の靴だけで解説していますが、実際やるときには両方の靴で進めてください)
靴を洗う前に、まず邪魔になる靴紐を外し、馬毛ブラシでブラッシングします。
あらかじめブラッシングをして砂利や泥などの大きなゴミを払い落としておくと、後のスポンジを使って洗うステップが楽になります。
この手順で使用する道具「馬毛ブラシ」
馬毛ブラシは、文字通り馬の毛でできたブラシです。
馬毛には程よいしなやかさがあるため、ブラッシングすることでホウキのようにゴミを払い落とすことができます。
普段の手入れにも使うものなので、持っていない方はこのタイミングで買っておいて損はありません。
(後半に、今回使用する道具を一覧できるようにしています)
STEP 2.「バケツにぬるま湯を張り、靴をひたす」
ぬるま湯を張ったバケツに革靴を浸し、5 分ほど放置して、靴に付着している汚れを浮かします。
靴が浮いてきてしまうときは、ひっくり返してソール側を上にしておくといいです。
STEP 3.「スポンジと洗剤で全体を洗う」
スポンジを使って洗剤を泡立て、靴全体を洗います。
ゴシゴシと洗うと傷がついてしまうため、優しく洗顔するようなイメージで洗うのがコツです。
靴の内側もスポンジをいれてしっかり洗いましょう。
この手順で使用する道具「革用洗剤」と「スポンジ」
革用洗剤は革製品を洗うために作られた洗剤で、ブラシやクリーナーで落とせない汚れを落とすために使用します。
この記事では、定番の革用洗剤である「サドルソープ」を使って洗い方を解説しています。
スポンジは、 100 均に売っている食器洗い用のものでかまいません。
STEP 4.「歯ブラシで細かい部分を洗う」
次に、コバ(アッパーとソールの境目)や縫い目といった細かい部分を歯ブラシで洗います。
穴飾りがあるデザインの革靴の場合は、穴の部分もしっかり洗いましょう。
STEP 5.「泡を洗い流し、タオルで水気を拭き取る」
泡を洗い流し、タオルで水気を拭き取ります。
泡が残っているとシミになることがあるので、流し残しがないようにしましょう。
内側もしっかり水気を取っておくと、乾くのが早くなります。
STEP 6.「新聞紙を詰め、1 日陰干しする」
丸めた新聞紙を靴の中に詰め、風通しの良い日陰で干します。
普通に置いておくとソールの底面の乾きが遅く、カビが生えてしまうことがあります。
カビが生えないよう、立てかけてソールを浮かせるように干すのがコツです。
また、新聞紙は 3 〜 4 時間ごとに、こまめに入れ替えるようにします。
新聞紙をつめたまま放置すると、湿気を吸った新聞紙が逆に靴の中の湿度を高くしてしまいます(私は新聞紙を入れたまましばらく放置して、内側がカビだらけになったことがあります)。
直射日光下で乾かしたり、ドライヤーで乾かしたりすると、急激に乾燥することでひび割れの原因になるので、絶対にやめましょう。
STEP 7.「シューキーパーを入れる」
1 日干して半乾きの状態になったら、シューキーパーを入れて靴が型崩れするのを防ぎます。
革には乾燥する過程で硬化する性質があります。
シューキーパーを入れていない状態で完全に乾かすところまでやってしまうと、形が崩れた状態で革が硬化してしまい、履き心地が悪くなります。
靴のサイズに合ったシューキーパーを入れて、形崩れを未然に防ぎましょう。
STEP 8.「乳化性クリームを塗った後、完全に乾かす」
完全に乾かす前に、シューキーパーを入れるのと合わせて、乳化性クリームも塗っておきます。
乾かしている過程で、水分と同時に油分も抜けていってしまうので、事前に油分を補給しておくようなイメージです。
乳化性クリームは、ペネトレィトブラシに米粒 1 つ分くらいを何度か取り、円を描くように塗るのがコツです。
その後、豚毛ブラシを使って乳化性クリームをなじませます。
なじませることで乳化性クリームが革の表面全体に行き渡り、仕上がりが綺麗になります。
乳化性クリームを塗ったら、完全に乾かすためにさらに 1 〜 2 日風通しのいい日陰で干します。
この手順で使用する道具「乳化性クリーム」と「ペネトレィトブラシ」と「豚毛ブラシ」
乳化性クリームは、革に水分と油分を与えて保湿するためのクリームです。
ちょっとした艶出しの効果もあります。
ペネトレィトブラシは、手を汚さずにクリームを塗れる便利アイテムです。
手や布を使ってクリームを塗ることもできますが、ペネトレィトブラシがあれば細かい部分にもクリームを塗ることができます。
豚毛ブラシは、クリームを革になじませて伸ばすためのブラシです。
豚毛は毛先がしっかりしているため、これでブラッシングすることで革の表面全体にクリームがなじんでくれます。
STEP 9.「布で磨いて艶を出す」
完全に乾いたら、最後に布で磨いて艶を出します。
前のステップで塗った乳化性クリームに含まれるロウ成分により、布で磨くことで艶が出てきれいになります。
最後に靴紐を通したら終わりです。
下の写真は、洗う前と洗った後の靴を比較した写真です。
全行程で 3 日ほどかかりましたが、革がもつ風合いを残したまま嫌な臭いが無くなりました!
革靴を洗うときに必要な道具まとめ
たくさん道具が出てきましたので、ここで一度まとめておきます。
「洗うだけなのにこんなに道具が必要なの?」と思われるかもしれませんが、シューキーパーや乳化性クリーム、ブラシ類は普段の手入れでも使えるものです。
ニオイやカビを予防するには普段の手入れが大事なので、これを機に揃えておいて損はありません!
馬毛ブラシ
靴についたホコリやチリを払い落とすためのブラシです。この記事では洗う前に使っていますが、普段の手入れでもガンガン活躍してくれるブラシです。
バケツ
バケツは、自宅にあるのであれば自宅のものを、なければ 100 均のもので構いません。洗うときだけ使うものなので安く済ませましょう!
革用洗剤
洗剤は、革用のものを用意します。革が傷む可能性があるので、シャンプーやボディソープで代替するのはおすすめしません。
スポンジ
スポンジは 100 均に置いてあるような食器洗い用のスポンジで構いません。使い古しでも大丈夫です。
歯ブラシ
歯ブラシは、革を傷つけないよう、毛が細くてやわらかいものを使います。使い古しでも構いませんし、他の道具と一緒に 100 均で揃えても OK です。
タオル
タオルは汚れてしまうので、汚れてもいいタオルを 1 枚用意しましょう。
新聞紙
「新聞とってないよ!」という方は、100 均にいったついでに食器を包む用に置いてある新聞紙をすこしもらってくるといいかもしれません。ネットで無地の新聞紙が買えるのでそちらでも構いません。
シューキーパー
シューキーパーは靴の型崩れ防止に使います。洗うときだけでなく、普段から使えるものです。靴のサイズに合わせて用意しましょう。
乳化性クリーム
乳化性クリームも普段の手入れで使えるものです。色のバリエーションがありますが、黒の靴に使うのであれば黒を、それ以外の色にも使うのであればニュートラル(無色)をおすすめします。
ペネトレィトブラシ
ペネトレイトブラシは乳化性クリームを塗るときに使うブラシです。このブラシを使うことで、手や布では届かない細かな部分にもクリームを塗ることができます。
豚毛ブラシ
豚毛ブラシは乳化性クリームをなじませます。こちらも他のブラシと同じく普段の手入れでも使える道具なので、一本持っておいて損はありません。
布
布は、最後に磨いて艶を出すために使います。靴磨き専用の布の代わりに、使い古した T シャツなどでもかまいません。
水洗い以外の方法で臭いとカビを取り除く
冒頭でも簡単に触れましたが、水洗いは以下のようなときにおこなうのが効果的です。
- 臭いがキツイとき
- カビが生えたとき
水洗いをすることでこれらの問題を解消できますが、水洗いをするのは最後の手段と考えたほうがいいです。
というのも、やはり水洗いによって革が傷んでしまうリスクはゼロではないからです。
この記事ではなるべく革が傷まないやり方で水洗いする方法を解説していますが、やらなくて済むならそれに越したことはありません。
ここでは、臭いとカビを水洗いをせずに取り除く方法をご紹介します。
臭いを取る方法
臭いを取る方法としては、水洗いの他に、除菌スプレーが効果的です。
水洗いほど効果は高くありませんが、革が傷んでしまうリスクもなく、靴の中にシュシュっと吹いて乾かすだけなのでお手軽です。
その他の方法については、以下の記事で詳しく解説しています。
カビを取る方法
カビを取るのにも、実は除菌スプレーが効果があります。
こちらも水洗いほど効果は高くありませんが、除菌スプレーと、カビを拭き取るための布やブラシを用意するだけなので比較的手軽にできます。
カビの落とし方については、下の記事で詳しく解説しています。
臭いとカビを防ぐには
ここからは、臭いとカビそれぞれの予防法をご紹介します。
臭いの予防
まず、臭いの予防については、同じ靴を毎日履かず数足をルーティーンで履くようにするのが効果的です。
足は意外と汗をかくのですが、同じ靴を毎日履いていると汗が乾かずにずっと湿ったままになり、臭いの原因となる細菌が繁殖します。
そうならないよう、汗を乾かす期間を設けるために、ルーティーンで履くようにします。
カビの予防
カビの予防については、日頃の手入れが大切です。
手入れといってもそれほど難しくはありません。
下の記事で解説しているのは、ブラシ一本でできる簡単な手入れですが、これだけでもカビの予防の効果があります。
ぜひ習慣にしてみてください。
こんなときはクリーニングに出そう
自分で水洗いするのではなく、プロのクリーニングに依頼する方法もあります。
クリーニングを依頼する方が自分でやるより費用がかかりますし、履けない期間も長くなります。
ただ、自分で洗うよりもきれいにしてもらえますし、色落ちやシミになるリスクも小さくなります。
下のような場合は、「靴専科」などのクリーニングのプロに依頼したほうがいいでしょう。
絶対に色落ちやシミにしたくないとき
自分で水洗いすると、上で紹介したように革が傷んだり、色落ちやシミになったりするリスクがあります。
絶対に色落ちやシミにしたくないという方は、クリーニングに依頼した方が確実です。
自分で洗う時間がないとき
水洗いをするのには時間がかかります。
洗うのに 1 時間ほどかかるほか、乾かすのにはこまめに新聞紙を入れ替えたり、完全に乾く前に革を保湿したりと、自分で手を動かす時間が必要です。
「そんなことをしている時間がない!」という方は、クリーニングに依頼すれば自分で作業する必要は無くなります。
デリケートな革を使っている靴のとき
クロコダイルやリザード、オーストリッチといった特殊な革を使った靴は、クリーニングに依頼しましょう。
特殊な革はエキゾチックレザーとも呼ばれ、取り扱いがデリケートです。
自分で水洗いをすると色落ちやシミになってしまう可能性が高いため、プロに依頼した方が無難です。
おわりに
この記事では、革靴の洗い方を詳しく紹介しました。
革靴は下着や T シャツのように洗濯機で洗えるわけではなく、たくさんの道具とステップを踏んで洗わなくてはいけません。
しかし、水洗いをすると臭いやカビが取れて、次に履くときは新品の靴を履き下ろすような気分になります。
臭いやカビに困ったら、ぜひ水洗いをお試しください!